研究課題
新規モノマーの合成及び接着剤の試作の結果についてさらに詳細な接着メカニズムの評価、検討を行った。すなわち、歯質組織内に浸透し重合するモノマーとして、一分子中に親水性基と疎水性基を有するメタクリル酸エステルを合成した。これまでに合成した4-META、HPPM及びPhenyl-Pなどの接着機能性モノマー及び新規モノマーを用いた歯科用接着剤を試作した。新規モノマーを含む歯科用接着剤硬化物の物理的強度、吸水率などの基本物性を測定し、新規モノマーの添加効果と接着メカニズムを検討した。接着メカニズムの解析として牛歯を用いた接着試験で重合と接着の関係を明らかにすると共に、モノマーが歯質内に浸透して重合する接着機構をSEM、TEMによる観察から解明した。更に歯質内に含浸した樹脂の分析をXPS及びXMAを用いて行い、接着機能性モノマーの効果を詳細に調ベた。本年度は、日本側では、接着の長期安定性をSEM、TEMを駆使して、象牙質の接着境界面付近における接着剤成分と象牙質成分のまざり具合を調査した。この結果、接着耐久性の良い接着試料(in vivoの実験)と口腔内でヒト生活歯へ接着した試料とが透過電子顕微鏡で観察する限りにおいて同一の接着メカニズムであることが明らかにできた。この事実は、歯科治療に接着剤を利用した場合の予後の予測法として利用可能であり、今後の発展が十分に期待できる。また、中林は、10月12日に中国に行き、新規歯科用接着剤の評価法の打ち合せを行った。中国北京医科大学では、象牙質研削面をFT-IRで表面分析し、これと接着強さの関係を検討した。王同教授は、平成5年1月18日に来日し、中国における研究の進展状況の報告を行った。また、徐恒昌教授、王同教授、中林宣男教授らは「牙本質粘合机理的研究」について、1992年度中国国家教育委員会より、科技成果二等賞を授賞した。本研究は、当該研究室間の研究交流のみならず、中国の歯科治療、教育研究の向上、日中両国間の友好発展のためにも寄与している。
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