研究課題
「水産物の有効利用に関する日本・韓国の比較研究ー21世紀に向けてー」の第1年目は、日韓両国をはじめ多数国が出漁し、国際漁場となっている西部太平洋熱帯海域のカツオ・マグロまき網漁業を主要な対象とした。日本では海外まき網漁業と言われているこの漁業は、数少ない好況業種であるが、それを利用加工・漁業・経済サイドから調査・比較し、あわせて養殖・資源管理からの研究交流を試みた。日本のカツオ・マグロの漁業・水産加工基地である焼津、同じく韓国の漁業基地である釜山、缶詰工場所在地の馬山を日韓両国の研究者が相互に訪れ、ヒアリングによる実態調査、資料収集、工場見学等を行った。日本船は自国で建造し約700トン(国際トン数)、日本式の網地を使い、年間約7航海する。韓国では全般にアメリカン・スタイルで操業する。より大型の中古船(1000〜1300トン)を用い、漁網もアメリカ製、仲積船により水揚げする。日韓の漁場競合はあまりないと言う。漁獲物の利用加工については日本ではカツオ節を中心とするのに対して、韓国では缶詰用が大部分である。海外まき網ではキハダも混獲されるが、日本の缶詰加工は主としてキハダを原魚とし、カツオは少ない。缶詰企業は日本の大手水産会社との共同出資で設立され、工場設備・生産ライン等が酷設している。ツナ缶詰は小中学生の弁当のおかずとして、近年爆発的売行きを示している。韓国の漁業資源は総じて、MSYを上回る漁獲強度により減少傾向にある。とくにイシモチ・タチウオ・マダイ等の高級底魚類はほとんどが未成魚のうちに漁獲され、強い懸念が抱かれている。日本の養殖業は漁場の自家汚染・密殖等の間題を抱えているが、それは最近急速に発展しつつある韓国の養殖業に対し、重要な示唆を与えよう。
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