研究課題
国際学術研究
1、平成3年度には河野教授、4年度には寺尾教授をドイツに派遣し、研究計画、研究の進行を行い、平成5年11月には本プロジェクトの日本側代表者である横浜国立大学工学部教授坪井孝夫がア-ヘン工科大学衝撃波研究所に出張し、3年間の成果についての情報を交換し、横浜国立大学とア-ヘン工科大学でそれぞれ進行中の研究内容を話し合った。ア-ヘン工科大学においては、平成4年度に横浜国立大学で得られた成果を基にして、横浜側では研究室の大きさから実験できないような大型の装置の設計が平成5年度に進行しており、現在詳細設計がほぼ完了し、平成6年度にかけて、製造にとりかかる予定である。これは本科学研究費の援助により得られ、次期への発展の方向が得られた大きな成果であり、ドイツ側において、大型実験が実施できることとなった。この実験の内容は入射衝撃波により得られたマッハ数2前後の超音速流を末広ノズルを用いて加速して、反対側(下流)より伝播するデトネーション波とバランスさせる計画である(モデルI)。すでに、横浜国立大学に於いて小型の装置により、マッハ数5を出し、デトネーション波を減速させる事に成功しており、ア-ヘン工科大学に末広ノズルを2本設置する事により、マッハ数6-7の流れをつくり、静止デトネーションを実現させようとするものである。2、ア-ヘン工科大学からは、平成3年度にはクライネ博士、4年度にはジェッセン博士を横浜に招へいし、ドイツに於ける熱流速測定・カラーシュリレン法の説明を受け、横浜国立大学において、討論・実験を行った。平成6年2-3月に、本プロジェクトのドイツ側代表者であるH.グレーニッヒ教授を当横浜国立大学に招へいし、ドイツ側実験装置の詳細説明を受けた。また、日本側で開発中の2台の長方形断面を有するラバルノズルによる超音速流生成の成果と実験装置(モデルII)について説明し、質疑応答を行った。現在これらの装置は数ミリ秒から数十ミリ秒間マッハ数5が得られる様に設計されており、この状態の確認実験を以下のように行い、マッハ数5を確認した。即ち(1)淀み圧測定と静圧測定により、一次元流れとして、各部の流速とマッハ数を計算する事、(2)ナノスパーク光源を利用して、時間的高分解能下の、シュリーレン写真測定並びに影写真測定により、斜め衝撃波の角度を測定すること。また、これよりマッハ数を算定する事に成功した。(3)このマッハ数5の領域において、光学的方法により瞬時温度測定を行う事。現在この方法により、30-60Kの温度が実験的に測定されており、これは設計温度40Kと一致した。(4)超音速流中に微粒子を混入させ、その粒子による光の散乱・吸収の時間的ずれにより速度を求める方法により、600-700m/sの流速を測定した。(5)作動流体を3000K程に加熱したものを用い同様の流速を得、この流体中に燃料を噴霧し、下流側より遡ってきた衝撃波中での自己着火とその観測に成功した。また別の装置により、円管内において、(6)理論混合気の気体燃料を、上記マッハ数5の圧力状態に近い5-50mmHg中でデトネーションを生成させる事に非定常状態ながら成功した。この際、煤膜模様観測により、スピニングデトネーションを観測した。これらの成果をグレーニッヒ教授と討議しあい、その成果を確認した。3、グレーニッヒ教授と本プロジェクトについて話し合い、大学の様な小型の実験室に於いて、スクラムジェットの研究が出来るかを検討し、方法を開発するという当初の目的は達し、二つの方法が提案できた。さらに同教授と本プロジェクト終了後、この成果を基にしてさらに発展させる計画を話し合った。その結果、(1)モデルIについては大型実験をア-ヘン工科大学で行い、その成果を交換する。小型機での実験を横浜でさらに続けて行う事とした。(2)モデルIIについては、さらに持続時間を高める様な装置の改造、超音速流中での噴霧燃焼・着火、超音速流中での予混合気のデトネーション発生と減速法の研究を横浜国立大学でさらに発展させる事とした。
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