広西農学院を訪問し、広西農学院における植物組織培養施設の視察を行った。広西農学院ではこれまで「バナナ」の優良系統の選抜育種を行い、選抜された系統を茎頂培養を用いて年間300万本を生産し、広西省内の周辺農家に配布する事業を展開していた。年間300万本の組織培養苗を生産できる企業は、日本でも1社しかなく、極めて高い生産技術を修得していたが、ランに関しては試験段階にとどまっていた。現地でのランの自生種の調査を行ったが、南寧市周ではシンビジュウム属の種がほとんどであった。しかし、中国国内で出版されている植物分類学に関する書籍を調査したところ、広西省にはデンドロビウム属をはじめとして、バンダ属等も豊富に自生していることが明らかとなり、次年度での調査地域を広げた植物分布調査を実施する必要性が明らかとなった。研究実施検討会を開催した結果、広西農学院では自生植物を茎頂培養することによりin vitroで大量増殖し、フラスコ苗あるいは順化した苗として生産することにした。日本での生産状況調査から、ラン生産農家は潜在的に優良で安価な苗の購入を希望しており、現在のタイなどからの海外輸入苗に不安を抱いていることが明らかとなり、中華人民共和国からの輸入に期待を述べた。また中華人民共和国国内には、いわゆる洋ランの導入がほとんどなく、広西農学院からシンビジュウム、デンドロウム、カトレアをはじめとする洋ラン種苗の導入の希望が述べられ、次年度にこれらの実施を検討することとした。広西農学院での学術講演会を実施し、80名以上の研究者がこれに参加し、活発な討論が1時間以上にわたって行われ、次年度の訪問時には再度講演会の開催を実施することを取り決めた。
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