研究課題
ハロゲン化アルカリにおける自己捕獲励起子の原子構造を明らかにするために格子欠陥電子状態のabinitio計算コ-ドおよび半経験的分子軌道(INDO)コ-ド適用の最適条件を求めた。ハロゲン化アルカリ自己捕獲励起子は、ハロゲン分子イオンを構成する正孔と電子より成り、前者はオフ中心変位を起こし電荷の中心は一致しない。前年度までにLiClとKClを用いて、比較的オフ中心変位の小さい励起子緩和状態について計算を行った。その結果、ハロゲン分子イオンが結晶におけるハロゲン原子間距離の1/5程度変化した点でエネルギ-の極小点が現われることが明らかとなった。しかしながら、最近の研究では、ハロゲン化アルカリの緩和励起状態はいくつかの形態を取ることが明らかとなって来た。しかも我々の研究室で得た実験的知見によると、自己捕獲励起子は、ハロゲン分子イオンが最近接点まで変化したF・H中心と同様の配置も取ることが明らかとなった。そのため、さらにハロゲン分子イオンを変化させて得られるいくつかのF・H中心対での電子状態の計算が必要である。本年度においては、まず両計算コ-ドのパラメタ-とさらにF中心の電子を記述する擬電子軌道のパラメタ-を求めることに専念した。その結果、KClおよびNaClについてF中心およびH中心を記述出来るパラメタ-を得た。それを用いて行った予備計算によると、ハロゲン分子イオンが最近接点まで変位すると、ハロゲン分子イオンが回転する方がむしろ系のエネルギ-が低下することを見つけた。このことはこれまで全く知られていなかったことで、自己捕獲励起子の模型を決定するのに重要な知見である。本年度においては、さらに表面における自己捕獲励起子と自己捕獲励起子の分解による原子放出の計算を開始した。これによって、来年度以降における研究の方針を立てることが出来た。
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