研究課題
ハロゲン化アルカリについて、固体内部及び表面における励起子について、最低状態の断熱ポテンシャル曲面の ab initio 計算を行い、励起子緩和過程についての知見を得た。これまでの研究により、励起子の正孔が2個のハロゲンイオンと結合しハロゲン分子イオンが生じること、ハロゲン分子イオンと電子とのクーロン反発力によりハロゲン分子イオンが並進運動を起こしハロゲン副格子における空格子点と格子間原子とからなるフレンケル対を形成することが知られている。本研究にいては、従来から知られているハロゲン分子イオンの並進運動のみではなく、回転運動まで取り入れた2次元の最低状態断熱ポテンシャル曲面を求めた。その結果、断熱ポテンシャル曲面の底の部分は、極めて平担で、いくつかの極小値を持つことが明かとなった。このことは、励起子の自己捕獲によって種々の配置の緩和形態が出現するという最近の実験結果を裏付けるものである。また、極小値は、回転運動をともなった点に現れ、励起子の緩和過程で、並進運動と回転運動とが混在することがわかる。また、励起子の緩和の初期で対称性の高いところでは、配置間相互作用の重要性を示唆する結果が得られ、今後の研究の発展の方向を決める上での指針を得た。固体表面については、これまで励起子緩和に関する知見が全く得られていなかった。本研究では、表面第1層から第4層までそれぞれの層に作られた励起子の緩和を支配する断熱ポテンシャル曲面を求めた。その結果、表面第1層での励起子緩和をハロゲン原子の表面からの放出に帰することが出来ることが明かとなった。さらに、第4層以下での励起子の緩和は固体内部での緩和とほぼ同一であること、また、第1層と第4層との間で生じた励起子は固体内部と同様な自己捕獲状態をとるが、極めて不安定でハロゲン原子の放出を誘起する可能性が強いことが明かとなった。さらに表面近傍で生じた格子間原子(H中心)も不安定で、容易に分解しハロゲン原子を放出刷ることが明かとなった。
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