発生異常(奇形)と悪性腫瘍のDNA解析に基く腫瘍発生のメカニズムの追求

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03045045
• 研究機関: 東海大学
• 研究代表者: 渡辺 慶一 東海大学, 医学部, 教授 (00055865)
• 研究分担者: NABER Stepha Dept.of Pathol Tufts Univ., Sch.of Med., Assistant ; WOLFE Hubert Dept.of Pathol.Tufts Univ., Sch.of Med., Professor ; 堤 寛 東海大学, 医学部, 講師 (80138643) ; 守内 哲也 東海大学, 医学部, 助教授 (20174394)
• キーワード: tumor banking system / 胃癌 / 乳癌 / polymerase chain reaction / 癌抑制遺伝子 / P^<53> / heat shock protein

研究概要

本年度は研究初年度でもあり、まずサンプルの収集とその管理システムの確立を行った。主たる収集の対象は、乳癌および胃癌としDNAおよびRNA抽出のための新鮮組織の凍結保存と免疫組織化学による蛋白発現の検討のための新鮮凍結切片用ブロックの作製を行った。対照標本として非腫瘍部組織のサンプリングを行い、現在のところ、乳癌、胃癌ともに50例を起える新鮮材料が畜積された。共同研究者堤が1991年12月に渡米した際、Tufts大学で行われているtumor banking systemの運用に関する貴重なアドバイスが得られたことは大きな収獲であった。先天奇形や小児腫瘍のサンプリングは、まだ症例数が限られている状況である。胃癌サンプルの一部からは既にDNAおよびRNAが抽出され保存されている。
Wolfe教授のグル-プとの話合いの結果、当面の検索対象を、癌抑制遺伝子の一つであるP^<53>にしぼることが確認されたため、現在、polymerase chain reaction(PCR)法を利用したP^<53>遺伝子の点変異ないし部分欠損の証明のための方法論の最終的な詰めが検討されている。また、変異P^<53>蛋白は正常のP^<53>蛋白と異なり、核内での代謝を受けにくく、長時間核内にとどまる性質を利用して、変異P^<53>蛋白を免疫組織化学的に証明することが可能である。P^<53>蛋白の免疫組織化学的局在観察に適した染色条件は既に検討済みで、来年度以降、癌組織への応用を開始する予定である。P^<53>蛋白は、heat shock protein(HSP)ー70と結合し安定化することが知られていることから、P^<35>蛋白の局在とHSPー70の核内発現の関連を、免疫組織化学ならびに分子病理学的な手法による今後の追究の対象の1つとしたい。

研究成果

• [文献書誌] Tsutsumi Y,Kawai K,Hori S,Osamura: "Ultrastructural visualization of human papillomavirus DNA in verrucous and precancerous squamous lesions." Acta Patho Jpn. 41. 757-762 (1991)
• [文献書誌] Tsutsumi Y,Kawai K,Nagakura K: "Use of patients' sera for immunoperoxidase demonstration of in fectious agents inparaffin sections." Acta Pathol Jpn. 41. 673-679 (1991)
• [文献書誌] Tauchi K.Tsutsumi Y,Hori S,Yoshimura S,Osamura RY,watanabe K.: "Expression of heat shock protein 70 and c-myc protein in human breast cancer:an immunohistochemical study." Jpn J Clin Oncol. 21. 256-263 (1991)
• [文献書誌] Hori S,Kawak K,Tsutsumi Y,Osamura RY.: "Ultrastructural demonstration of chlamydia trachomatis DNA by in situ hybridisation using a biotinylated DNA probe,in comparison with immunoelectron microscopy." Med Sci Res. 19. 429-430 (1991)
• [文献書誌] Utsunomiya H.Komatsu N,Yoshimura S,Tsutsumi Y,Watanabe,K: "Exact ultrastructural localization of glutathione peroxidase in normal rat hepatocytes:advantages of microwave irradiation." J Histochem Cytochem. 39. 1167-1174 (1991)