研究分担者 |
STEPHAN P.Na Tufts Univ., Sch.of Med.・Dept.of Pathol., Assistant
HUBERT J.Wol Tufts Univ., Sch.of Med.・Dept.of Pathol., Professor
堤 寛 東海大学, 医学部, 助教授 (80138643)
守内 哲也 東海大学, 医学部, 助教授 (20174394)
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研究概要 |
本年度の成果は以下の4点にまとめられる。 1)新鮮腫瘍組織からのDNA収集の手順が確立され,今後の検討に耐える体制が整った。胃癌は,50症例を越えるDNAサンプルが蓄積されている(堤,守内)。 2)P^<53>蛋白(代表的癌抑制遺伝子産物)を通常のパラフィン包埋切片を用いて免疫組織化学的に証明する際の至適条件を確立した。即ち,脱パラフィン切片をPBS中で90℃,120分加熱処理すると,腺癌細胞核内に発現するP^<53>蛋白が極めて再現性よく証明された。87例の大腸腺腫内癌を対象として検討すると,71例(82%)の腺癌部分にP^<53>蛋白陽性像を認めた。正常上皮は陰性で,異型度のつよい腺腫にも一部所見が観察された(主に陽性核と陰性核の入交るモザイク状)。これらP^<53>蛋白の免疫反応性とP^<53>遺伝子の点変異の依存(パラフィン切片を用いたPCR法で解析)との相関性は今後の検討課題である。形態学的に腺腫や腺癌を異型度別に整別して,P^<53>のDNAおよび蛋白レベルの解析を行うことは,大腸癌の発生を追究する重要な手段となるであろう(堤,渡辺)。 3)1992年12月にWolf教授が来日した際,in situ PCR法の技術論に関するセミナーが催された。現在,HIV(エイズウィルス)やEBウィルスといった病原体の特異的で高感度な証明に応用され始めており,今後は,RT-PCR法によるmRNAの観察に応用されうる。方法の詳細は,1993年3月下旬に共同研究者堤が渡米の際に視察してくる予定である(Wolf,Naber,堤)。 4)ヒトホメオティック遺伝子の1つでてあるHox4B遺伝子の5'側部分とMBP蛋白DNAのリコンビナントfusion proteinを大腸菌で発現させ,これに対する抗血清が作製された。免疫組織化学的なスクリーニングにより,このホメオボックス蛋白がヒト正常副腎髄質に発現していることが示唆された。今後,厳密な特異性の確認,mRNA発現との比較,褐色細胞腫の観察等を順次検討してゆく予定である(守内)。
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