研究概要 |
赤血球膜を介した陰イオンの透過は典型的な膜内在性蛋白質であってバンド3蛋白質と呼ばれる分子量約10万,911個のアミノ酸から構成されている糖蛋白質で媒介されている。バンド3蛋白質は各組織に存在し,現在のところ3種類のアイソザイムが知られている。陰イオン透過系は細胞内のpHや浸透圧,細胞容積の調節,必須栄養素であるリン酸の取込みなど,細胞が正常に機能するのに必要である基本的環境維持に働いている。赤血球においては炭酸ガス,酸素の運搬に必須の作用であり,循環血液のpH調節にも重要な役割を演じている。 我々は、細胞膜の物質透過の分子機序の理解を深める目的で陰イオン透過機構の蛋白質化学的研究を共同で行っている。本研究プロジェクトでは,赤血球膜陰イオン透過系をモデルとして、その活性中心に必須のアミノ酸残基の決定や活性中心を構成するペプチド群の同定を目的としている。 本年度は、陰イオン透過系の選択的で拮抗阻害剤であるDIDSが特異的に結合するペプチドを同定分離,さらに,一次構造決定を目的として研究を行った。その結果,[ ^3H]H_2ーDIDSと選択的に結合するペプチドが精製され、そのペプチドはバンド3蛋白質のPheー813から始まることが判明した。残念ながら,まだ,完全配列は出来ていないが,このペプチドは,我々が以前にピリドキサルリン酸/[ ^3H]NaBH_4でアフィニティ-標識したLysー851が含まれていると推測され[ ^3H]H_2ーDIDSもLysー851に結合している可能性が大へん高く,改めて,Lysー851が陰イオン透過活性に必須のアミノ酸残基であることが示唆されている。
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