研究概要 |
細胞膜の陰イオン透過系はバンド3蛋白質で媒介され,主に,塩素イオン,重炭酸イオンや無機リン酸などを透過し,細胞内外のpHの調節,細胞分化発育の調節などを行なっている。この系は細胞にとって基本的で不可欠な細胞膜の透過系である。 本透過系の分子機構を明らかにし,細胞分化発育の調節機構の一端を解明するのが目的である。具体的には,これまでの我々の研究室で明らかになった,透過活性発現に必須であるバンド3蛋白質のカルボキシ末端から61番目のリジン残基(Lys-851)を指標にして,バンド3蛋白質の膜貫通ドメインの膜内での位置的相互関係(トポロジー)を決定し,膜内でのバンド3蛋白質の高次構造を明らかにする。解析の主要方法は蛋白質化学的手法を用いる。 バンド3蛋白質の高次構造を明らかにする事は本件究目的には絶対的に必要なことであり,そのような観点から,バンド3蛋白質の膜内ドメインの中でどの部分がHydrophilic Connector Loop や Transmembrane Spanning Region なのかの決定を蛋白質化学的に行なった。その結果,現在,膜内在性蛋白質の膜内二次元的構造の解析は専ら一次構造から推測されたHydropathy Predictionにより行なわれており,ややもするとその予測が絶対的なものとして様々な議論がなされているが,その予測は充分でなく蛋白質化学的に実証される必要があることが我々の研究で明らかになた。その成果はJ.Biol.Chem.267,19211-17(1992)に発表した。 現在,この結果を基に陰イオン透過系の特異的な阻害剤であり,架橋剤(cross-linker)でもあるH_2DIDSを用いて架橋される膜貫通ドメイン(Transmembrane Spanning Region)の同定を行ない,さらに,アミノ酸配列の解析を行なっているところである。
|