研究概要 |
本研究では,地球環境問題の原因を経済成長と環境保全が調和しない経済発展パタ-ンにあると把握したうえで,いわゆる持続可能な発展(Sustainable Denelopment)をマクロ的自立的な環境保全型発展と理解し,その理論的整理と実行可能性及びその経済的基礎を解明することを目的としている。本年度は,基本モデル構築のための基礎的調査研究を行い,以下のような成果があった。 (1)環境資源勘定の国民所得勘定体系上の位置を明らかにするために,現行指標における環境配慮の限界及び指標改良の試みに関する研究動向を整理した。その結果,環境に配慮した指標体系には,(1)地球的視点の取り入れ方,(2)地域的視点の取り入れ方,(3)世代間公平性に関する検討可能性,という3点が課題であることが確認された。 (2)環境保全型成長モデル構築の第1段階として,CO_2排出量抑制評価を目的とした,長期的な一般均衡の枠組みによって定式化された国内モデルを作成し,CO_2排出量抑制の経済的影響評価を試み,他のモデルの計算結果との比較検討を行った。シミュレ-ション結果には多分のばらつきが見られるが,モデル構造に基づく相違の一般的傾向はほぼ同様であることが明らかになった。 (3)先進国の産業構造・消費構造と発展途上国での資源・環境問題との関係を定量的に検討するための方法論として,国際産業連関表の理論的・実際的課題と作成状況および環境問題への適用可能性に関する基礎的検討を行った。資源や環境を媒介とした日本とアジアとの経済的関係への適用の必要性が確認されるとともに,課題が整理された。 (4)開発プロジェクトの持続可能性の条件とその実現可能性を解明するために,主として世界銀行における水資源開発事業を含む流域管理プロジェクトの事例を収集し,環境費用の取り扱い方法を類型化した。
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