研究概要 |
持続可能な発展の定義および測定指標について既存研究のレビューを行ったが,生物学的多様性,世代間衡平,世代内衡平,環境収容力など多様な指標が用いられており,きわめて多義的に用いられていることが明らかになった。環境資源勘定に関する指標改良の方向として,(1)地球的視点を取り入れるべきこと,(2)世代間の衡平性が検討できる指標が必要であること,(3)地域的視点をも取り込んだ体系にする必要があることを指摘し,そのためのデータベースの一部を構築した。 動態的市場均衡モデルによるCO_2排出量抑制の経済分析を行った。CO_2排出量課税一削減率の関係推定結果では,ノルドハウスらの研究と比較してほぼ中間的な推定結果が得られている。また,国内の他のモデルとの比較では,CO_2排出量を現状レベルに抑制した場合の経済的影響はかなりの開きがあるが,課税抑制に必要な税率,あるいは直接抑制の限界費用については比較的一致した結果が得られた。 発展途上国の今後の経済成長を念頭に,環境保全の視点から経済成長プロセスの国際比較分析を行った結果,日本の明治以降の成長プロセスをGNPとエネルギー消費の関係から検討してみると,現在の発展途上国の成長プロセスは日本よりキヨリエネルギー多消費型であることが明らかになった。 流域管理プロジェクトを事例に,その実態分析を通じて,開発プロジェクトにおける持続可能性の条件について検討した。開発プロジェクトの評価基準として費用使益基準を用いることは持続可能基準と一致することもあるが、たとえばCO_2排出規制問題の場合には,CO_2の排出量を1単位削減したことによって得られる使益に関する不確実性があまりにも大きく,通常の量用使益基準で政策目標を定めることは困難であるし,危険でもあることが確認された。
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