研究概要 |
昨年度に引き続き、地球初期の始生代および原生代岩石試料約150個について、岩石研磨薄片の顕微鏡観察、粉末X線分析、蛍光X線分析による全岩化学分析、および炭素・イオウの含量とそれらの同位体比分析などを行った。用いた試料は主にオーストラリア・ピルバラ地域(約35〜20億年前)、南アフリカ・ババートン地域(約33〜29億年前)およびカナダ・ラブラドル地域(約19億年前)のものであった。ピルバラ地域については夏期に地質調査と試料採集を行った。 その結果、これら頁岩などの堆積岩中のFe,Mg,Ca,K,Naなどの陽イオンの挙動は昨年の研究結果と一致しており、基本的に顕生代のそれと同じであり、始生代の風化-運搬-堆積という過程が現在と同じようなメカニズムで動いていたことを示す。このことは現在まで言われてきた始生代の大気はほとんど酸素を含んでいないということでは説明がつかず、始生代の大気にはかなりの遊離酸素がすでに存在していたと考えられる。また、頁岩中に含まれる炭酸塩の金属陽イオン比、炭素および酸素の同位体比よりこれらの炭酸塩の多くが熱水活動によって生成したことが明らかとなり、作年の微量金属元素の分布から得られた結果と一致する。 超微量ガス同位体比測定用質量分析計を用いて、Nd-YAGレーザーでガス化された岩石試料中の微小部分の(数100μm径)の硫化物および硫酸塩のイオウの同位体比が測定された。研究代表者が予測していたとおり、十数cm幅の岩石試料で同位体の値がばらついており、始生代の海洋にすでに硫酸環元バクテリアが活動していた可能性が示された。このことはその当時、大気中に遊離酸素がある程度存在していたことを示す。また、同じレーザーを用いて岩石中の有機物の数100μm径範囲での炭素同位体比の分析も可能であることが明らかとなった。さらに、今年度納入されたCO_2レーザーを用いてケイ酸塩の酸素の同位体比測定のための予備実験が行われた。
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