研究概要 |
1)擬2次元の拡がりを有するポリカルベン1,3,5ー[H(mーC_6H_4C:)_<n/3>]_3C_6H_3(1(n=12,18))の合成を行なった。エチニルケトン誘導体の3量化で中央のベンゼン環を形成しポリケトンとする反応条件の最適化に成功した。その結果、さらに拡がりの大きいStarburst型ポリカルベンの合成指針が確立した。1(n=12,18)は、光ガイドを装着したFaraday型磁気天秤の中で極低温において、対応するポリジアゾ化合物の光分解により合成し、in situで磁化と磁化率を測定し、S=6、9の高スピンを基底状態とし、通常の遊離基分子よりも一桁大きな磁気モ-メントを持つことを確認した。 2)1のカルベン中心を安定ニトロキシドラジカルで置き換えたポリ(mーオキシイミノフェニレン)(2)の合成を進めた。難溶性固体試料が得られ、その磁化と磁化率を調べた結果、極低温ではS=1のスピンが顕著であるが、100Kでは、50〜100個のスピンが整列した区分を含むことが明かとなった。 3)2ー位にニトロキシドラジカルを、5ー位に長鎖アルコキシル基を有するポリ(pーフェニレンビニレン)を、Wittig反応を用いて合成し、2)と類似の結果を得た。いずれも不均一固体試料であるが、スピン整列の進んだ区分を増やす合成および試料作成の試みを続けている。 4)側鎖にペンダント状のラジカル中心をもつポリアセチレン(3)、ポリジアセチレン(4)では、高スピン種は得られていない。問題点を明らかにする目的で、2量体ユニットのビニロ-グである置換1,1ージフェニルエチレンのp,p'ー、m,p'ー、m,m'ージナイトレンおよびジニトロキシドについて交換相互作用の大きさと符号を調べた。p,p'ージラジカルの場合のみ弱い強磁性的相互作用が認められ、m,m'ー体においては原子価結合/トポロジ-理論の予測との矛盾が認められた。3、4の側鎖のラジカル位置は全てpー位でなければならず、また交換相互作用は、1、2にくらべて必ずしも大きくないことが明かとなった。
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