研究概要 |
1.Starburstおよび環状構造を持つ超高スピンポリカルベンの合成:分子構造が擬2次元的広がりを持つポリカルベン1,3,5-[H(m-C_6H_4C:)_<n/3>]_3C_6H_3を合成し,磁化の測定を行い,n=6,9の場合これまで最高のS=6,9の超高スピン有機分子であることを明かにした.エチニルケトンの三量化で中央の1,3,5-三置換ベンゼン環を形成する反応機構を明かにした.合成経路を論理的に発展させ,高度に枝分かれレスピンの集積度を高めた分子構造を実現した、ウンデカカルベン(S=12)では,分子間・分子鎖間の相互作用は反強磁性的であった.2Kでの直流磁化に大きな異方性があり、主軸の回転には障壁のあることが観測された.この超常磁性的な挙動のキャラクタリゼーションに、交流磁化率測定装置を用いて解析を行った. 2.安定高スピンポリニトロキシドラジカル合成:m-C_6H_4および1,3,5-C_6H_3を強磁性的カップラーに用い,室温空気中で安定なジ-よびトリニトロキシドラジカルを設計・合成した.ESRの微細構造およびSQUID法による磁化率から,これらがそれぞれ三重項および四重項を基底状態とすることを明かにした. 3.高スピン分子の組織化による巨視的スピン秩序形成:2.で合成した安定ジ-およびトリニトロキシドラジカルを二価および三価配位子とする遷移金属錯体を各種合成した.そのうち,Mn(hfac)_2のトリニトロキシド(TN)錯体で,転移温度3.4,46Kでフェリ/フェロ磁性体となる錯体の実現に成功した.単結晶のX線結晶構造解析を行い,(TN)_2{Mn(hfac)_2}_3をユニットとして,前者では2次元網目構造,後者では3次元構造が形成されていることを明らかにした. 4.有機固体中でスピン整列を促す分子間力の設計・探索:芳香族ポリアミドの水素結合およびポリチオフェンのS・・・S相互作用を想定して,二量体ユニットにおける交換相互作用のプロトタイプを合成し,その大きさと符号を解明した.
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