研究概要 |
研究目的:B細胞悪性腫瘍・バ-キットリンパ腫は,そのほとんどが赤道アフリカに集中多発する。こうしたアフリカバ-キットリンパ腫(BL)には,B細胞不死化因子EpsteinーBarrウイルス(EBV)のゲノムDNAが発現し,本腫瘍の成因と密接に関連している。一方,BLは,特有の細胞遺伝子学的・病理組織学的性状,即ち,第8・14染色体間の相互転座とCーMYC遺伝子の活性化,およびStarryーsky組織像を示す。しかし,EBV単独ではこれらの異常を生じない。本研究は,BLの発生が,EBVと未知の因子の共軛により生じる可能性を明らかにすることを目的とする。 成績:BLは赤道東アフリカに集中多発し,この地域に特異な植物・Euphorbia tirucalliの密生が見出された。このE.tirucalliの抽出液は,潜在EBVを著しく活性化し,ヒトBリンパ球のEBV不死化を増強した。本植物の活性成分は4ーdeoxyphorbol ester(4ーDPE)と同定された。さらに,EBVと4ーDPEの共存は,正常Bリンパ球に第8染色体を含む染色体再構成を誘導し,CーMYC遺伝子を活性化し,ヌ-ドマウスに悪性リンパ腫を惹起した。また,4ーDPEは,EBV特異的細胞性免疫能の低下に働き,EBVと4DPEの共存下でトランスフォ-ムしたBリンパ球はEBV細胞性免疫に高度の抵抗性を示した。 考察:以上の成績は,従来不明に経緯したBLの成因が,EBVと特異な赤道アフリカ植物E.tirucalliの共軛によって惹起される可能性を強く示唆するものである。
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