研究概要 |
ポドフィロトキシン誘導体エトポシドはDNAトポイソメラ-ゼIIを阻害して薬効を発揮する抗癌剤として注目を集めている。しかしながらその阻害活性発現の有機化学的精密度での活性発現機構は不明のままである。本研究では阻害活性発現に必要なエトポシドの分子構造を先ず明らかに浮き上がらせ、次いでより有効な阻害剤の開発を射程に据えるべくエトポシド窒素置換体を材料として以下を検討した。その結度、エトポシドより阻害活性の強力な窒素置換キノン体を発見し、エトポシドの阻害活性を直接担うのがフェノ-ル体ではなくキノン体であることを示唆するに至った。 ポドフィロトキシン窒素置換誘導体は3,4ーメチレンヂオキシフェニルアラニンを出発物質として短工程で合成した。光学純品体の合成も光学活性体を出発物質として同経路で合成した。 これら合成ポドファロトキシン型化合物はKB細胞に対して強力な増殖阻害活性を示したが、トポイソラ-ゼIIに対してはほとんど阻害活性を示さなかった。一方、4'ー脱メチル体であるフェノ-ル体はKB細胞に対して活性が弱まり、またトポイソメラ-ゼIIに対してもほとんど阻害活性を示さなかった。しかしながらその酸化型であるオルトキノン体はエトポシドよりも4倍程度強いポイソメラ-ゼII阻害活性を示した。 窒素置換体が親化合物であるポドフィロトキシンフェノ-ル体よりも酸化電位が若干であるが高いことと考え合わせると、エトポシドは酸化的代謝過程によりフェノ-ル部がオルトキノンへと酸化されてトポイソメラ-ゼII阻害活性を発現するに至ることは充分推測されることである。
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