[1]本年度の成果 (1)Mu・IFNーβの結晶を更に作成し、より高分解能のX線回折デ-タを収集し、立体構造の精密化をやり直した。 (2)Hu・IFNーβの立体構造を、コンピュ-タ-・グラフィックス(既有)上で類推した。Hu・IFNーβはMu・IFNーβと約40%のアミノ酸配列上のホモロジ-があるので両者のポリペプチド鎖の基本構造は同一と見なした。実際、側鎖の入れ換えの後、エネルギ-計算等を行うことにより、十分信頼出来る結果が得られた。 (3)Hu・IFNーα及びβについては、既に外国で部位特異的変異による生物活性への影響が若干調べられているので、これを上記の(2)の結果にもとずいてトポロジカルに整理しなおし、Hu・IFNーβについて我々が行う蛋白質工学的改変の方針を立てた。 (4)Hu・IFNーβのクロ-ニング、発現、抽出、精製の技術は既に東レ(株)基礎研に於て確立されている。そこで、上記の(3)の方針に基ずき、種々のアミノ酸残基を改変したIFN(Hu・IFN´ーβ)を調製した。 (5)上記の(4)で得られた種々の改変IFNの生物活性を調べた。 主な結果として、 1)IFNーβの構造中で、最も揺らぎの大きいル-プであるCDル-プは、血液中で、蛋白分解酵素による攻撃を受けて、IFNーβの生物活性の消失の原因となっている可能性がある。そこで、このル-プ中の5残基を取り除いてみた。その結果は、蛋白質としての発現が困難となったり、in vitroの活性が逆に低下したりした。 2)CDル-プ等に糖鎖をつけて、蛋白分解酵素による攻撃を防ぐべく、数カ所にAsnーxーSer(またはThr)の配列を導入してみた。Asp73をAsn73に変えた改変体では、in vitroの活性が不変であった。In vivoの成績が楽しみである。 3)Arg33、Asn37、Glu43、Tyr132、Lys136、Arg147、Arg152の側鎖の重要性が確認された。
|