【研究目的】ATLの発症における危険因子の解明を目的として、末梢血単核細胞中のHTLVーIプロウイルスDNA量によるキャリア-の解析を行った。 【研究方法】1.HTLVーIキャリア-末梢血単核細胞(PBMC)のプロウイルスDNAの定量は、HTLVーIのプライマ-SK43/44を用いたPCRで行い、PCR産物は、アガロ-ス泳動・エチジウムブロマイド染色後、デンシトメ-タ-で測定し、階段希釈したHUT102・DNAで作製した標準曲線と比較しHUT102・DNA相当量で表した。PCRの効率の検定には同時に増幅したβグロビン遺伝子を測定した。2.対象は1991年に採取した宮崎地方のキャリア-66名のPBMC。プロウイルスDNA量の経時的変化をみるためには、1985、1988および1990年に採血した20名のPBMC。 【研究成果】1.プロウイルスDNA量は、HUT102・DNA5.0ng以上(感染リンパ球約5%):15名(23%)、1〜4ng:20名(39%)、1ng以下:19名(29%)、検出感度以下:12名(18%)であった。2.経時的変化をみた20名中(男5、女15)、高値のものは11名であったが、うち6名では5時間に低下傾向がみられた。3.プロウイルス量とPBMCのCD4+・CD25+/CD8+・CD25+比は相関した。 【考察】プロウイルスDNA量がHUT102・DNA5.0ng相当以上と多く(これから算出した感染リンパ球:5%以上)、ATL発症のリスクが高いと推定されるキャリア-は23%(男では35%)であった。しかし、プロウイルスDNA量は60才以上では約半数が5年間にやや減少する傾向を示した。今後は、リスクが高いと思われるプロウイルスDNA量が多く、しかも低下傾向のないキャリア-を重点的に追跡し、発病要因の解明に努めたい。また、CD4+/CD8+比よりCD4+・CD25+/CD8+・CD25+比はプロウイルスDNA量とよく相関した。
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