研究概要 |
我々はすでに種々のペプチド増殖因子で刺激した細胞において、各条件下における細胞DNA合成促進の程度とよく一致して細胞質41K、43K蛋白質のチロシンリン酸化が急速に促進されることを明らかにしている。最近それらがSer/Thrキナ-ゼ活性をもつ可能性が示唆されてきたので今年度はその点について検討した。 Microtubleーassociated protein 2(MAP2)やmyelin basic protein(MBP)などを試験管内で良い基質とする特異なSer/Thrキナ-ゼとして最初に精製、cDNAクロ-ニングされたERK1の一部ペプチド配列を合成し、これを利用してERK1に対する抗体を作製した。この抗体はPDGF刺激したSwiss 3T3細胞中の分子量41,000、43,000のリン酸化蛋白質を特異的に免疫沈降したが、これらの二次元電気泳動上での移動度は上記41K、43K蛋白質のそれらと同じであった。それらが互いに同一蛋白質であることはV8プロテア-ゼを用いてのペプチドマッピングによって確認した。41K、43Kリン酸化蛋白質にはそれぞれ等電点の異なる2つのスポットが存在したが、いずれもリン酸化チロシンを含み、より酸性のものはさらにリン酸化スレオニンも含んでいた。リン酸化セリン・スレオニンに特異的なホスファタ-ゼ2Aを用い、更にMBPを含むゲルを利用してのゲル内リン酸化反応による解析より、上記41K、43K蛋白質はいずれもチロシンおよびスレオニン残基のリン酸化によって活性化されるSer/Thrキナ-ゼ活性を持ち、それらはMAP2やMBPなどを良い基質とする、いわゆる「ERK/MAPキナ-ゼ」ファミリ-の一員であることを明らかにした。これらキナ-ゼの増殖シグナル伝達における具体的な役割を明らかにする目的で、41K、43K蛋白質をコ-ドする遺伝子のクロ-ニングをラット脳cDNAライブラリ-より行い、41K蛋白質については成功した。現在その過剰発現細胞株の樹立を試みている。
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