研究概要 |
現在、抗腫瘍活性環状ヘキサペプチドの一種であるRA系の化合物について検討を続けている。すでに、RAーVIIについては臨床の第I相試験を受けている最中であり、本化合物についての構造活性相関や、さらに天然からの類似化合物で活性の強い化合物を検索している。 RAーVIIについては、溶液中の3種のコンホマ-について、分子動力学計算・分子力場計算等の分子モデリングプログラムを用いてコンピュ-タ-グラフィックスによる解析を行い、興味ある知見を得ている。立体配座解析により、コンホメ-ションの相違と活性との関係について検討した結果、A,B,Cの3種のコンホマ-の中では、Aの存在が最も多く、90%を占めている。また、このコンホマ-はtype II βーturn構造を有しており、活性が最も強いと思われる。 さらに、RAーVIIの生体における代謝も検討し、ウサギ胆汁中に11種の代謝物の存在を確認した。これらの化合物は、すべてRA系化合物の基本骨格を有しており、それ以上に代謝過程の進んだものについては、まだ、追求されていない。これら代謝物中には、分子内のベンゼン環に水酸基の置換したものが多く、やはり構造活性相関を論ずる対象として活性試験の検討を進めている。いずれこの方面からも新知見が得られるものと思っている。 一方、同種植物のアカネの抗腫瘍活性画分を詳細に成分検索することにより、その後さらに種々のRA系化合物が、単離・構造決定された。それらの構造は、構成アミノ酸中の特定のアラニンが、スレオニンやグルタミン酸に置換されたもの、あるいは、そのグルタミン酸が閉環したもの、さらに、グルコ-スが配糖体として結合しているものなどであり、合計16種のRA系化合物を得ている。これらの新規のRA系化合物については、in vitro,in vivo抗腫瘍活性試験を検討中である。
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