研究課題/領域番号 |
03152131
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研究機関 | (財)癌研究会 |
研究代表者 |
中村 祐輔 癌研究会, 癌研究所・生化学部, 部長 (70217909)
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研究分担者 |
三木 義男 癌研究会癌研究所, 生化学部, 研究員 (50229671)
西庄 勇 癌研究会癌研究所, 生化学部, 研究員 (10228182)
堀井 明 癌研究会癌研究所, 生化学部, 研究員
佐藤 孝明 癌研究会癌研究所, 生化学部, 研究員 (30225958)
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キーワード | 家族性大腸腺腫症 / APC遺伝子 / プロヒビチン遺伝子 / 遺伝子診断 / NF1遺伝子 |
研究概要 |
大腸癌に関しては、数千に及ぶ大腸ポリ-プが発生し大腸癌が多発する家族性大腸ポリポ-シス症(FAP)の原因遺伝子であるAPC遺伝子の単離に成功した。この遺伝子は2843アミノ酸からなる蛋白をコ-ドしており、部分的にM3型アセチルコリンレセプタ-のG蛋白活性化ドメインと推測される部分との相同性があることから、シグナル伝達系に関与する癌抑制遺伝子であると考えられる。この遺伝子の遺伝的な変異はFAPを引き起こし、体細胞レベルでの変異は一般に見られる単発性の大腸のポリ-プや癌の発生に深く関与していることを明らかにした。これまでに53例のFAP患者の変異同定することができたがわずかに4例がアミノ酸の置換を引き起こす変異を有しているだけで、他の49例は小さなDNA断片の挿入・欠失によるフレイムシフトや終止コドンを生じる点変異によって蛋白の合成が中断する変異であった。20例の一般大腸癌についても変異を調べたがFAP患者と同様の変異を起こしていた。また、変異は特定の部位に集中しておらず、遺伝子全体に散在して起こっていた。家族性の場合にはこれで100%確実な発症前診断が可能となり、正常であれば、病気になるのではとの不安や頻回の検査から解放される。また、不幸にして病因遺伝子を受け継いだ人でも、リスクを知ることによって早期発見・治療が行え、患者を癌死から救うことにつながる。乳癌に関しても、第17染色体に位置する新しい癌抑制遺伝子を同定した。プロヒビチン遺伝子と呼ぶこの遺伝子は272アミノ酸をコ-ドし、C端側は増殖抑制因子と考えられているNF1遺伝子や酵母のIRA2遺伝子と類似している。23例の乳癌組織でこの遺伝子の体細胞変異を調べたところ、4例においてプロヒビチン蛋白の機能に重要な変化をきたすと思われる変異が認められたことから、プロヒビチン遺伝子は乳癌の発生に関与する癌抑制遺伝子であると示唆された。
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