本年度の研究計画として挙げたウイルムス腫瘍遺伝子(WTー1)のノックアウトによる好発癌マウスモデルの作成は予定通り進行している。即ち、あらかじめ単離してあったマウスWTー1遺伝子に変異を導入し、これをES細胞に導入することにより変異WTー1遺伝子を持つES細胞数クロ-ンを単離した。現在このES細胞よりのキメラマウスの作成を行っている(R.Jaenischとの共同研究)。さらに本年度花上記のウイルムス腫瘍遺伝子に加え、ヒト家族性大腸腺腫症(FAP)のモデルマウスの作成を開始した。本年度、癌研・生化学部の中村らによりヒトAPC遺伝子がこのFAPの原因遺伝子として単離された。そこでこのヒトAPC遺伝子をプロ-ブとしてマウス染色体DNAライブラリ-よりマウスAPC遺伝子の80%以上をカバ-すると思われる25個のλファ-ジを得、これを用いてマウスAPC遺伝子の構造を解析した。マウスAPC遺伝子の一部の塩基配列のデ-タからは、このAPC遺伝子はマウスとヒトの間で非常によく保存されており(90%以上)、重要な遺伝子であることが示唆された。次いで単離したマウスAPC遺伝子にこのAPC遺伝子産物が発現しなくなる形の変異を導入し、これをES細胞内に導入し約200個のES細胞クロ-ンを単離した。これらのクロ-ンのAPC遺伝子をサザンブロッティング法により解析したところ、その中の1クロ-ンでAPC遺伝子が相同遺伝子組み換えの結果、ノックアウトされていることを確認した。現在、このES細胞クロ-ンを用いてブラストシスト内注入法によりキメラマウスを作成中である。
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