災害による被害の拡大を最小限にとどめるには、被害情報の迅速な検知と刻々と変化する災害被害状況の把握、ならびにそれに基づいて行われる避難誘導や救援対策に関する情報の、市民及び行政各機関への伝達など、情報連絡が如何に適切に行われるかが決め手となる。本研究は、防災担当者ならびに市民のこうした災害時における情報連絡能力の向上を計るための訓練プログラムの開発を目的としたもので、平成2年度において基本的枠組みを設計したゲ-ミングタイプの訓練プログラムを、実際のデ-タを収集して完成し、研究室内で実験的に試行して、その効果を評価するとともに、改良を加えて、実施手続きをマニュアル化し、プログラムの実用化を計ったものである。 災害時の情報連絡といってもその内容は多岐に亘るため、訓練の対象者を発災後設置される災害対策本部の救急担当の本部員に限定し、負傷者の救急搬送対応についてプログラムを開発した。プログラムは、コンピュ-タ-シミュレ-タ-とロ-ルプレ-イングゲ-ムとを組み合わせたもので、シミュレ-タ-は災害現場の負傷者発生状況、医師及び救急隊の参集状況、負傷者の後方医療機関への搬送過程をコンピュ-タ-内に再現し、時間の経過と共に変化する現場の状況に関する情報を次々とアウトプットする機能を持たせた。一方ロ-ルプレ-イングゲ-ムは、訓練者がプレ-ヤ-となって、これらコンピュ-タ-から与えられる情報をもとに、救急隊運用に関する適切な指揮計画を作り、自分の受け持ち区域の救急隊に命令を発するとともに、必要に応じ自衛隊、消防庁などに対し要請を出して応援を求め、如何に多くの負傷者を短時間で後方医療施設に搬送するかを競う形とした。学生をプレ-ヤ-として試行した結果、ゲ-ミング全体としてうまく機能することが確かめられた。
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