研究概要 |
洪水年および平水年における流路変動とそれに伴う河岸侵食を検討するために,バングラデシュの三大河川下流部における河道変動の資料解析と河岸侵食区間を対象とした平面二次元流れの数値解析を行った。まず,1987年から1991年までのランドサットTM写真の解析から,ガンジス河では蛇行曲頂部の発達と移動傾向が若干みられるが,流路の変動や河幅の変化は顕著でなく,ブラマプトラ河では網状・蛇行区間の流路変化と河幅の拡大が顕著で,堆積域より侵食域が大きく,砂州の縮小・消失が大洪水後に進行していることを指摘した。一方,メグナ河の河岸侵食については,砂州の下流への伸長・拡大とそれに対応した河岸侵食が進行していることを明らかにし,数値解析の結果から河岸付近の流速は水位が河岸より上昇すると減少し,実測の水位・流速関係および洪水の逓減期に河岸侵食が顕著になる事実との対応や河岸侵食の卓越する箇所で流速が極大値を示すことなどを明確にした。 つぎに,洪水時の土砂の氾濫堆積過程については,氾濫解析における非線形項の上流差分で解の安定化と平滑化を周り,数値粘性が有効となるような非定常性の強い流れとして貯水池決壊による洪水・土砂流出を対象とし,貯水池内で侵食された土砂が下流域へ伝播して堆積する状況が計算された。一方,ピ-ク時の流況のような準定常流解析では,氾濫原と河道部の水深や粗度の相違による横断方向の流速分布を表現するために水平粘性項を付加し,植生で覆われた氾濫原と河道をモデル化して数値解析を行い,氾濫原での水平渦や自然堤防の形成を明らかにするとともに,三隈川(島根)の洪水・土砂氾濫への適用性を示した。また,植生を単純化した多列円柱粗度を有する水路実験を行い,流速および浮遊砂濃度の鉛直分布モデルを提示するとともに,浮遊砂の堆積機構を明らかにした。
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