アバランシュバレ-という用語が初めて使われたパプアのニミントン山の噴火(1951年)や、磐梯山、浅間山、御岳山における侵食の実態を地形図から整理した。それらから大規模な土砂移動の結果、大規模なU字形の谷が形成されていることが確かめられた。砂、プラスチックビ-ズを用いて安息角の斜面状の粉子の移動を観察した。乾燥した粉子流によっては粒径程度の深さまでの粉子が流れに連行されるものの、それ以上の深さに渡る侵食は見られなかった。つぎに、インドネシア、スメル山の最近数年間の火砕流による谷頭部の地形変化を調べた。1992年5月より雲仙岳で発生している火砕流のビデオについても一部解析を行った。その結果、火砕流の発生で谷の側壁が徐々に破壊されプ-ン状に広がるきっかけを与える可能性のあることが分かった。しかしここでも火砕流によって斜面、谷底が強く侵食されることは見出せ無かった。さらに、浅間山については古文書の解読、ボ-リング資料から噴火の様子がこれまでいわれていたものとは異なり、侵食は火砕流によるものというよりも土石流的なものである可能性が高まった。また、堆積層が水で飽和した安息角に近い急勾配の斜面に水を与えて土石流を発生させると、先端から少し遅れるがかなりの深さまで移動を始めることが分かった。現在までの研究では、緩勾配のアバランシュバレ-のできる原因は明らかになっていない。わずかに土層中の水の関与が示唆されたのみである。雨水の流出特性から見て火山の山体にはかなり多量の水が蓄えられていると考えられ、その方向からの研究と総合した検討が必要である。
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