研究概要 |
閉鎖性海域、開放性海域における港湾、漁港および海岸構造物の過去最大級の台風災害を研究の対象とし、過去10年間における台風による長崎県および熊本県の港湾・漁港および海岸構造物の被害と台風の特性との関係に関する比較研究において、被災構造物の地域分布特性、被害規模、被害発生件数、構造物の配置特性、設置場所の地形特性などに関するデ-タの統計解析および台風の特性解析によって得られた主な研究成果は、次の通りである。 1)各被災構造物の被災状況および非被災構造物を含めた構造物の設置環境、周辺地形の調査および踏査から、それらの構造物の配置および位置によって、安全性の評価の可能性があることが明らかになった。 2)閉鎖性の海域における波浪推算により、代表沿岸の沖波と被災規模との関係を求めた。特に、バイス・バロットの法則の適用を試み、気象・海象・水理特性と被害特性(統計諸量)の関係を明らかにした。 3)過去10年間における被害と台風のコ-スとの関係において、被害は台風のコ-スに深く依存していること,および両海域にとって台風の最悪コ-スを明らかにした。 4)台風8513号は中心気圧970mb程度の中型の台風で、台風通過時と満潮時に時間的ずれがあったことを明らかにし、さらに発達した台風が大潮の満潮時に同じコ-スをとった場合には、数倍の被害の発生する可能性があることを示した。 したがって、これらの統計的比較研究における成果は、両海域における防災力を備える沿岸構造物の計画や、設計の際の基礎デ-タを与えるとともに、港湾、漁港および海岸構造物の被害の実態についてのデ-タ蓄積、整備あるいは防災力向上を図る上の災害調査手法、被災評価手法および比較手法における有益な提言材料を示した。
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