研究概要 |
1.国際環境立法・行政の特徴 越境大気汚染(酸性雨など)や地球大気汚染(オゾン層破壊,温暖化)を含む環境条約及び国際環境行政の実態を分析した結果,次の特微が確認できた。(1)立法形式の多様化(特に、科学的不確実性の存在するときはソフトロ-の多用),(2)立法・適用プロセスのスピ-ド化(委任立法,承認の簡素化,条約の暫定的適用)(3)新しい基準設定の試み(選択的インセンティブ,差別的義務,地域主義,より厳しい国内基準の奨励),(4)基準実施上の改善(国内許認可措置の相互承認,条約履行の監査,基準の非遵守に対する手続,集団的履行)。 2.越境大気汚染規制に関する国際法 SO_xやNO_x等の大気汚染物質による越境汚染を規制する国際条約は,欧州や北米地域においてのみ存在する(1979年長距離越境大気汚染条約及び3議定書,1980年米加酸性雨覚書及び1991年米加大気質協定)。東欧を含む前者は,規制物質の排出量及び越境移動分の削減,情報交換・協議・研究開発の国際協力,汚染物質の長距離移動のモニタリングと評価の国際協力,そのための資金調達等を定めており注目に値する。両者のソフトロ-からハ-ドロ-へ,一般的義務から細目的義務へという立法及び規制方法は,日本を含む極東アジア地域における酸性雨問題の解決にとって参考になる。 3.地球大気保全のための国際法 上記の立法・規制方法は,オゾン層保護についても採用された(1985年ウィ-ン条約,1987年モントリオ-ル議定書)。これら2つの国際文書のとった立法方法や次のような規制方法は気候変動枠組条約の立法化にも参考になる。すなわち,国際機関による総量規制・モニタリング,先進国の差別的義務,途上国への優遇措置,規制物質の生産枠の移転,国際基金の利用による規制の促進,不遵守国への手続などである。
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