本研究では(1)BHC分解性土壌細薗Pseudomonas paucimobilis SS86のの由来株において有効なベクタ-系ならびに効率的な遣伝子導入法を確立して宿主ーベクタ-系を構築すること、(2)本菌のBHC分解能の育種に投立てるためにBHC分解系の初発過程を担うlinA遣伝子の構造および発現制御に関する知見を得ることを目的として以下の成果を得た。1.DNA形質転換法の検討:linA遣伝子欠失株のYO5株を宿主とし、電気パルス法(ジ-ンパルサ-使用)を検討したが形質転換体は得られなかった。2.接合伝達法の検討:YO5株についてヘルパ-プラスミドを用いた三親接合伝達法を検討した。RK2由来のpRK2501およびpVK100は高頻度で導入できたが、RSF1010由来のpMFY42は導入できなかった。RSF1010系のベクタ-は本薗では有効ではないと推定された。3.ベクタ-の安定性:pVK100は安定に保持されたが、pRK2501は不安定だった。以上の結果から、本宿主薗でpVK100が有効なベクタ-として利用できることが示された。4.分解能欠損株における遣伝子構成:LinA活性欠損株の3株についてのサザ-ン交雑でlinA遣伝子断片はハイブリダイズしなかった。LinA活性の欠損がDNAの欠失に由来することを示唆しており、linA遣伝子周辺にDNA組換えのホットスポットが存在する可能性が考えられる。5.転写プロモ-タ-の解析:UT26株におけるノ-ザン交雑においてlinA遣伝子の転写物は約600bと推定された。プライマ-伸長法により転写開始点は主にー93のTと結論された。linA遣伝子は分解系遣伝子に良く認められるような長大なオペロン構造を構成していないと考えられる。以上の結果からlinA遣伝子は近傍のプロモ-タ-から転写が行われることが明らかとなった。本菌へのlinA遣伝子再導入のための組換え体構築について極めて重要な知見が得られた。
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