研究概要 |
研究目的;太陽光紫外線がヒトに遺伝子レベルでどのような変化を及ぼすかを検討することが本研究の目的である。その為にまずヒト皮膚に類似する無毛マウス背部に太陽光近似の紫外線を照射し、どのような遺伝子変化がおこっているかを塩基配列を決定することにより知る。特に紫外線により変化を受けやすいと考えられるピリミジン(TとC)に注目して、その変異に紫外線特有の型があるかをみた。紫外線は点突然変異をおこしやすいとされており、ras遺伝子では、点突然変異をおこすことにより活性化する例が知られている。そこで、ras遺伝子において、露光部と非露光部皮膚及び肝臓でras遺伝子の変化がないか、またどのくらいの照射量によりどのような変化があらわれるかについて解析した。 研究計画・方法;1)無毛マウスに健康蛍光ランプを週1ー3回照射する。その露出部に生じた腫瘍を切除し、DNAを抽出する。一方、同一個体のマウスの非露出部皮膚と肝からもDNAをとる。2)得られたDNAを、ras遺伝子(Hーras,Kーras,Nーras)の点突然変異を起こすことが知られているexon1とexon2を含む領域をpolymerase chain reaction法により増幅しダイデオキシ法で塩基配列を決定した。4)ras遺伝子の変化について、照射部皮膚、非照射部皮膚、肝臓について比較し照射量と遺伝子変化との関係を解析する。 結果;露光部に生じた腫瘍においてHーrasについて2系統でコドン13の真中の塩基がG:C→T:Aにトランスバ-ジョンをおこしているのがみつかった。Kーrasについて2系統でコドン61の最初の塩基がG:Cにトランスバ-ジョンをおこしており、これらは、いずれもとなりあったピリミジンの片方におこっており、紫外線によって突然変異がおこったことが示唆される。それらの同一個体の肝臓DNAではそのような突然変異は検出されなかった。
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