研究概要 |
全世界の水田面積の約90%近くを占める東南アジアの水田からのメタン発生量を知ることは、メタンの大気中濃度増加の原因解明の上で重要な課題である。そこで、前年度に行った国内の稲作水田からのメタン発生量の通年測定の実績をベ-スに、タイ国立環境省の研究者の協力を得て東南アジア地域における最も重要な稲作地帯の1つであるタイにおいて、水田からのメタン発生量の測定を行い、日本の発生量デ-タとの比較を行った。 測定は、2期作が多く行われているバンコクの北約40kmの水田地帯の2地点の水田において、各々1990年9〜11月および1991年2〜4月の期間について測定を行った。1990年9〜11月の測定では、田植後約1カ月の9月半ばの5.9±0.7mgCH_4/m^2hrから始まって、10月半ばの16±3mgCH_4/m^2hrの最大値を経て,11月には13±5mgCH_4/m^2hrという発生量変化を示した。この測定結果は、日本の水田での測定結果にみられる田植後1〜2カ月頃にメタン発生量が最も高くなるという一般的な傾向と同じ事がタイの水田においても起こっていることを示している。一方、タイあるいは東南アジアでは日本に比べて有機肥料の施肥量が多く、また高温であることから単位面積当りのメタン発生量は日本に比べて多いことが想定されたが、今回の測定で得られたメタン放出速度の最大値は10月半ばの値で、この値は前年度に測定した福岡県の水田におけるメタン発生の最も盛んな時期の発生量20mgCH_4/m^2hrと同程度であり、従来の推定が過大であることを示唆している(1991年2〜4月のデ-タについては現在解析中である)。 本測定結果は、従来実測デ-タのなかったタイにおける水田からのメタン発生量に関する新しい知見を与えているが、タイの水田におけるメタン発生量の全体像を推定するためには今後更にデ-タの集積が必要である。
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