電力需要の増大や電源の遠隔化などにより、電力系統は電圧崩壊の危険にさらされている。負荷端の電圧維持のためには従来変圧器タップの切り換えや電力用コンデンサの投入などがおこなわれてきた。しかし、応答速度に限界があるため、電圧を維持し切れず電圧崩壊に至る可能性がある。 本研究では、超電導磁気エネルギ-貯蔵装置(SMES)が高速に有効電力Pおよび無効電力Qを制御できることに着目し、まず、負荷端近傍にSMESを設置した場合にどれだけ電圧安定度が向上できるかについて検討をおこなった。その結果、特に負荷上昇速度が早い場合にSMESの効果が大きいことが確認できた。さらに2機6負荷のくし型系統モデルを用いて電圧安定度向上のために最も良いSMESの設置場所はどこかについての検討もおこなった。電圧安定度向上のためには電源から離れた地点にSMESを設置することが望ましいが、最遠隔地が必ずしも最適設置点となるとは限らず、系統構成毎に検討が必要であることが示された。 また、負荷端に設置したSMESを多目的に利用することを検討するため、電力動揺の抑制効果についても検討をおこなった。一般に電力動揺の抑制のためにはSMESを電源側に設置することが望ましいものと考えられる。しかし、負荷側に設置した場合でもある程度の効果があることがシミュレ-ションによって明らかになり、電圧、電力動揺の双方に効果がある多目的SMESの可能性が示された。
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