本研究は水深6000m以上の海底に於ける天然地形を利用して高圧流体の貯蔵を行うことを最終目的とする基礎研究である。 本研究では、第一歩としてCO_2・hydrate・水三相共存下でのhydrateの熱力学的物性と生成・分解速度を実測する。また電子顕微鏡察に基づき、hydrate結晶の成長機構を明らかにする目的で、水溶液からの溶質結晶構造を考察する。それらの結果を利用して、CO_2の海洋拡散に関するシュミレ-ションを行い、hydrate屋根の安定性と有効性を明らかにする。 研究成果の概要 (1)水溶液構造と結晶成長機構 水溶液を重力場に長時間静置しておくと重力方向に密度勾配が生じることを実験的に確認した。この現象は溶液中に分子の凝集体が存在し、かつそれらが重力場でブラウン運動をしているとして説明できた。またUVスペクトルでも光の散乱が確認され、凍結しプリカの電子顕微鏡観察でも大きな凝集体が確認された。溶液の不均一性と同時に凝集体が結晶成長にどう係わっているのかを明らかにするのにはこれからの課題である。 (2)hydrateの物性・反応・結晶成長 新たに温度サイクル法と呼ぶ測定法を提案し、CO_2・hydrate・水三相共存状態での温度・圧力関係を実測した。同時にhydrate反応がCO_2濃度に関して擬一次反応として取り扱えることを確認した。hydrate結晶構造は、水溶液から成長した結晶と類似の二重構造であった。 (3)hydrate膜の成長過程とシュミレ-ション これらの結果を基に、貯蔵庫起ち上げにおけるhydrate屋根の生成機構をシュミレ-トした。hydrate分解によって生じるCO_2の拡散が仰制されることが示された。
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