研究概要 |
[目的] LB法による超薄膜分子層を機能性分子デバイスとして実現させるためには、薄膜を構成している分子について、その静的構造ばかりでなく動的な分子運動そのものについての理解が不可欠である。この分子運動はナノ秒時間領域で起こり、測定には極めて高い時間分解能が要求される。本研究はピこ秒パルスレ-ザ-光励起による時間分解蛍光偏光解消法を用いて平面分子膜中の分子運動を計測するための理論と実験法を確立することを目的としている。 [研究成果] 従来、蛍光偏光測定は縦・横二方向から測定される蛍光強度を基礎としていたが、平面分子膜に適用するためには、直交する三方向の偏光成分(I_X(t),I_Y(t),I_Z(t))を独立に測定する必要がある。我々は試料を一定角度回転させ、励起光の照射角度を変化させることによりこれら三成分を独立に測定することに成功した。さらに三方向の座標軸にそった蛍光偏光の度合は、新たに定義した「蛍光率」(fraction of polarization; M_X(t),M_Y(t),M_Z(t))を用いて表した。 M_X(t)=I_X(t)/[I_X(t)+I_Y(T)+I_Z(t)]=∫dμ・N(μit)・(μ・X) (M:蛍光分子の変向ベクトル,X:X軸の単位ベクトル,n:励起の分子の時刻tにおける配向確率分布。Y,Z軸についても同様) この偏光率を用いることにより平面配向分子膜について,膜形成分子の配向に関して極角(δ)と変位角(γ)が,また分子運動に関しては揺動角(θ_c)と揺動拡散定数(Dw)が求められた。ステアリン酸LB膜に対しては、室温においてδ=20^0,γ=-35^0,θ_c=20^0 D_W=5×10^7_<S^<-1>>を得られ、分子がナン秒時間領域で運動していることが実証された。
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