(1)大気圧・低真空環境下でのSTM/AFMプロ-ブ先端形状評価法の開発 原子サイズで構造の確定した標準試料のSTM像より逆にプロ-プ先端の構造を確定する大気圧・減圧環境下での新しいナノ構造評価法の提案・開発を試みた。計算より、ステップ構造に対しては、プロ-ブ先端の曲率半径(R)はステップのエッジに、先端の開き角(2θ)はステップ側面に反映されていることが示唆された。Pr‐Irプロ-ブを用い、実際のSTM観察を行ない本評価法の有効性を調べた。標準試料としてリソグラフィ-処理により表面に1μm角の溝をつけたSiウエファ-および自然ステップが存在するBi系酸化物高温超伝導体膜を用いた。前者ではθのSTM像への反映は確認されたが、Rの10nmの精度で推定はできなかった。これは、ステップが10nmの精度で切れていないためと考えられる。後者ではRの反映が見出された。 (2)AFMナノプロセシングの開発 大気圧下AFMナノプロセシング(ナノ加工、ナノ物性評価、ナノ構造評価)への応用を進めている。ナノ加工については、大気中でマイカ上に数十nmの大きさのドットを作製することに成功した。一方、ナノ物性評価については、Au、ダイヤモンド薄膜、マイカなどを対象にして大気中での距離‐力特性(フォ-スカ-ブ)測定を行った。今回の実験では、試料の表面状態(平坦さ、水蒸気などの吸着分子など)の厳密な制御を行っていないため、物質間の差以上に、それらの効果による違いが現れた。さらに、CVD法により作瓢したダイヤモンド膜の堆積時間依存性のナノ構造評価を大気中で行った。100nm程度までの構造は比較的簡単に得られたものの、それ以上の高倍率(数十nmの構造)ではプロ-ブの曲率半径数十nmと試料の平坦さ(20nm程度)との相互関係から、像の解釈においては十二分に考慮すべきである。
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