シラン(SiH_4)のフッ素(F_2)による自発的気相酸化反応を利用する新しいSi系薄膜の低温成長技術のデバイス作製のプロセス技術としての確立を図るため、p型、n型ド-パントとして、フォスフィン(PH_3)およびジボラン(B_2H_6)を選び、本成長法における価電子制御の可能性を検討した。ド-パントの添加は、原料ガスであるSiH_4にたいし0.1%以下の極めて微量添加した場合においても膜成長に大きな影響を与え、PH_3のド-ピングでは、ノンド-プ膜に比較して膜の構造化が促進され、一方、B_2H_6のド-ピングでは、わずか50ppmの添加においても著しい構造化の抑制が起ることが堆積膜の赤外分光スペクトルの測定から明かとなった。アモルファス膜の暗伝導率とその活性化エネルギ-の測定から、顕著な伝導率の増加とその活性化エネルギ-の低下(フェルミ準位のシフト)が確認され、成長時の気相ド-ピングにより価電子制御が実現されることが分った。アモルファス膜のド-ピング特性は、従来のシラン(SiH_4)を原料とする高周波グロ-放電法によるアモルファスSi膜のド-ピング特性と比較してほぼ同等であり、従来技術に比較して、p型ド-ピングにおいて改善がみられた。 一方、多結晶膜のド-ピング特性は、これまで知られる多の技術のによる価電子制御の結果に比較してn型ド-ピング特性における高濃度側での導電率の最高到達値が、約1ー2桁低く、改善の必要があることが指摘された。 これは、気相ド-ピングにおけるド-パントの膜成長に与える影響と密接な関連があり、多結晶膜のド-パント濃度の高い領域での膜成長では、系の雰囲気が膜の堆積からエッチング性に変ることが認められることから、ド-パント濃度の高い領域では、ド-パント分子の膜成長への関与により、膜成長の化学過程、時に成長表面での化学過程が大きく変ったためと考えられた。
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