研究概要 |
本年度は、エキシマ-、TICT蛍光および色変化を用いる新型センサ-について、重点的な研究展開を行なった。 (a) ピレンエキシマ-蛍光を用いる分子認識センサ- ピレン2個を1級水酸基側のAB,AC,AD,AE位置に有する4種類のγーCD飾体を合成し、分子認識特性を検討した。これらCD修飾体は、いずれも顕著なエキシマ-蛍光を520nm近辺に示した。そして、ゲスト添加によりエキシマ-蛍光の強度の増大あるいは減少が観察された。このエキシマ-蛍光の強度変化は4種類のホストによって異なり、個々のゲストに対して、独特のパタ-ンが得られた。これらの結果は、このセンサ-系が、ゲスト分子の置換基の有無、位置を敏感に反映する系であることを示している。 (b) TICT蛍光を用いる分子認識センサ- ジメチルアミノ安息香酸単位を有するβーCDを合成し、その蛍光スペクトルを測定したところ、495nmに強いTICT蛍光が観察された。ゲスト添加により、TICT蛍光の強度は減少し、この系もセンサ-として機能することが明らかとなった。 (c) 色変化とセンサ- 有機化合物を色の変化で検出できる分子認識センサ-として、媒体が中性から酸性に変わると色が横から赤に変わるpHを指示薬であるメチルレッド(MR)で修飾したβーCD(βMR)を合成した。βMRでは、pHを4以下にしてもアゾ基はプロトン化されない。これは、MR残基がβーCD空孔内に入り、酸性環境から隔離されるからである。ゲスト添加により、MR残基は空孔外に追い出されプロトン化される。そして、溶液の色は黄から赤に変わった。以上(a)〜(c)の結果は、分子認識センサ-が多様な原理で実現できることを示している。
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