研究概要 |
窒化インジウムや窒化インジウムアルミニウム混晶半導体は将来の短波長発光素子材料として長い間期待されてきたが,解離温度が低く,エピタキシャル単結晶薄膜成長は非常に困難であり,これらの材料の基礎物性は殆ど未解明である。我々はマイクロ波励起有機金属気相成長法を提案し,初めて単結晶薄膜成長に成功した。以下,研究実績を述べる。 1.シンクロトロン放射光による光学定数の決定 InNはオプトエレクトロニクス材料として有望であるといわれながら,未だその光学的特性は殆ど不明である。我々は,シンクロトロン放射光により高エネルギ領域(20eV)にいたる反射スペクトルの詳細な測定を行い,クラマ-スクロニッヒ変換により光学定数を初めて決定した。バンド構造との関連について検討を加えた。 2.エッチング液の開発 InNが将来デバイス作製に使用される場合,表面処理プロセスは不可欠となるが,現在エッチング液は全く知られていない。我々は,アルカリ性エッチング液が有効であることを始めて見出し,エッチング速度や温度依存性の詳細を明らかにし,鏡面エッチャントとして利用可能であることを示した。デバイス加工技術として今後有用となろう。 3.混晶半導体の作製と評価 InNにAlを加え,混晶半導体薄膜作製を試みた。Al組成が大きくなると単結晶成長は急速に困難になった。原因究明中であるが,Al組成の小さい時の組成依存性を明らかにしたが,今後さらに詳細な実験を要する。 4.アニ-ル処理による特性改善 現在のInN単結晶薄膜の結晶性は,それ程よくなく改善が必要である。我々は,450〜500℃でアニ-ルすることにより,大幅に結晶性を改善できることを見出した。今後,この詳細を明らかにする。
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