研究概要 |
インフルエンザウイルスの膜融合活性タンパク質(HAタンパク質)の活性部位を模した酸性pHー依存的膜融合活性ペプチド(HAペプチド)及び、そのアナログペプチド数種を合成し、タンパク質・核酸・薬剤等を封入したリポソ-ム表面に吸着・共有結合させた擬似インフルエンザウイルス(以下人工ウイルス)を調製すれば、細胞のエンドサイト-シスを利用したエンドソ-ム経由の全く新しい細胞内物質導入法の開発ができる。本年度は、人工ウイルスのkey pointとなる弱酸性pH(<6.0)での膜融合活性及び、赤血球溶活性などのbiomembraneに対する活性を有する酸性ペプチド(E5,E5L)を合成し、蛍光法・電顕観察を中心とした物理化学的手法により、融合活性に必要不可欠なペプチドの機能モチ-フを研究した。その結果、HAペプチドのN末端10残基程が活性発現に必要な両親媒性ヘリカル構造をつくる為の「核」となっていることを明らかにした。 また、培養細胞に取り込まれた人工ウイルスの挙動をリアルタイムに近い時間スケ-ルでモニタ-することは、今後の人工ウイルス改良に必要不可欠である。本年度は、リポソ-ムを蛍光共鳴エネルギ-移動(RET)を起こす2種の蛍光性脂質(エネルギ-供与体;NBDーPE,エネルギ-受容体;R_<18>)でラベルし、COSー1細胞に非特異的にエンドサイト-シスさせ、高感度ビデオ付き蛍光顕微鏡などで追跡することができた。また、リポソ-ムがエンドソ-ムやリソソ-ムで破壊されたり、それらの膜と融合すると、蛍光性脂質がそれらエンドソ-ムの膜上で拡散、RETが解消し、エネルギ-供与体(NBDーPE)の蛍光強度が増加し蛍光寿命が長くなることを、時間分解顕微蛍光法やセルソ-タを駆使し、単一細胞内での挙動を定量的に測光、追跡できた。
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