研究概要 |
高分子LangmuirーBlodgett累積膜を用いて高次構造を制御した高分子薄膜を調製し,その機能化を図ることを目的とする。本年度に得られた成果は次のとおりである。1.高分子LB累積膜の層間エネルギ-移動・伝達の定量的評価:ドナ-としてカルバゾ-ル(Cz)基を含むポリイソブチルメタクリレ-ト(PIBMA)(Czポリマ-),及びアクセプタ-としてアントラセン(A)基を含むPIBMA(Aポリマ-)を調製し,これらのポリマ-を用いて常法により石英基板上に多層膜を累積した。累積はCzポリマ-をn層,その上にAポリマ-を2層累積し,Cz基を選択的に励起したときのCz基,A基常光挙動を解析することにより,層内,層間でのエネルギ-移動(異種発色団間),伝達(同種発色団間)の速度を定量的に評価した。その結果,層間でのエネルギ-伝達は遅いが,層内では活発に起ること,層内でのエネルギ-伝達と競争的に隣接層間でエネルギ-移動が効率的に起ることを明らかにした。 2.励起エネルギ-移動による高分子LB膜の熱安定性評価:ポリビニルオクタ-ル(PVO)にエネルギ-ドナ-としてフエナントレン(P)基を,アクセプタ-としてアントラセン(A)基を結合したポリマ-を調製した。これらのポリマ-を用い常法によりLB累積膜を作成した。ドナ-層2層,アクセプタ-層2層の間にスペ-サ-層としてPVOをn層累積した試料について,昇温,降温したときのP基からA基へのエネルギ-移動効率を測定して,スペ-サ-層PVOの構造変化を調べた。その結果,累積層はPVOのTgよりも数十度高い温度から乱れ始め,一旦乱れると元の状態には復元しないことが明らかになった。またPVOをホルマ-ル化処理をして架橋すると,温度上昇に伴う層構造の乱れが抑制されて累積構造が安定化することが示された。本手法を用いてLB膜を作成できる他のポリマ-についても熱安定性を調べた。
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