研究概要 |
外部刺激に応答して薬物の放出を制御できる新規なマイクロカプセルを作製した。平成3年度においては、(A)光感応性基を組み込んだポリアクリル酸ーポリエチレンイミンコンプレックスカプセルの物質透過性の光による制御、および(B)薬物に対して高結合性を有する高分子を封入したカプセルからの薬物の放出挙動に関する研究を行った。 (A)4ーブロモスチレンとミヒラ-ズケトンよりグリニャ-ル反応によって、4ービニルトリフェニルメタンロイコヒドロキシド(VTL)を合成し、これをアクリル酸(AA)と共重合させて、VTLーAA共重合体を得た。このVTLーAA共重合体とポリアクリル酸ナトリウムの1:1混合溶液をポリエチレンイミン水溶液に滴下し、さらに水溶性カルボジイミドを用いて架橋することによって、光応答性基をカプセル膜に組み込んだポリアクリル酸ーポリエチレンイミンコンプレックスカプセル(直径5mm)を調製した。透過物質としてpートルエンスルホン酸(TSA)を用い、カプセルからの放出の光応答性を調べた。その結果、紫外光を照射しない場合、透過係数が9.8x10^<ー7>cm s^<ー1>であるのに対して、照射下においては9.4x10^<ー6>cm s^<ー1>に増大することがわかった。またカプセルからのTSAの放出速度は紫外光照射on,offによって可逆的に変化することがわかった。 (B)抗癌剤メトトレキセ-ト(MTX)に対して高結合性を有するN,Nージメチルアミノプロピルアクリルアミド4級塩ースチレン共重合体を封入したポリテレフタロイルピペラジンカプセル(直径5mm)を調製し、内部に取り込ませたMTXの放出を調べた。その結果、高分子のMTXに対する結合定数が大きくなるほど放出速度が小さくなること、またカプセルからのMTX放出速度はイオン強度や温度によって制御できることがわかった。
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