研究概要 |
本研究課題について以下にまとめる結果を得た。 [1]光導波路(OWG)ラマン分光法によるリン酸鉄薄膜の構造解析 通常のガラス導波路上にサブミクロンの厚さの有機、無機薄膜試料を調製し、後者の末端部分をテ-パ状とすることによって、ガラス導波路モ-ドを断熱的に試料に導き、そのOWGラマンスペクトルを測定する方法について、実験および理論の両面から検討した。通常のOWGラマンスペクトル法では、サブミクロンの膜厚の試料についてはTMー0またはTEー0モ-ドでしかOWGラマンスペクトル測定を行えないのに対して、この方法を用いれば、TMー1,2およびTEー1,2モ-ドでの測定も可能になることを明らかにした。この結果を1000ー2000Aのリン酸鉄薄膜に応用して、厚さ方向での構造変化を明らかにして、この方法の有用性を証明した。 [2]LangmuirーBlodgett(LB)累積膜内でのスチルバゾ-ル誘導体の光二量化過程の解析 全重水素化アラキジン酸(A)のLB累積膜にスチルバゾ-ル誘導体(S)を分散させ、340nm付近の光照射にともなう後者の二量化反応過程をフ-リエ変換赤外反射吸収スペクトル(FTーIRRAS)法で調べた。混合比(S/A=1/4〜1/19)と累積膜作製時のpH変化によりAの解離状態を変えて、光照射時間によるスペクトル変化を測定した結果、(i)Aの非解離状態での二量化が解離状態に比して速やかに進行する、(ii)反応は、反応速度の大きな初期過程(0ー約40秒)とその後の反応速度の小さな過程(40秒ー約3分)から成る、(iii)Sのアルキル側鎖の配向が、(ii)に対応して初期過程で垂直方向に、つづいて水平方向への変化を示す、ことなどが明らかになった。特に、(iii)の結果は、初期過程で二量化に有利な配置を取るS同士の速やかな反応で生じた歪が、徐々に緩和される過程と解釈された。
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