遺伝子のクロ-ニング法として確立している、ラムダファ-ジ試験管内パッケ-ジ法を用いて、トランスジェニックマウスに導入された外来遺伝子に生じた変化を検出し、哺乳動物生殖細胞/個体レベルで外来遺伝子の安定性を測定しうる系の開発を目指した。遺伝子マ-カ-として選択した大腸菌supF遺伝子をプラスミドpBR322に組込みさらにこれを、試験管内でパッケ-ジすることが出来るラムダファ-ジEMBL3に導入し、多くの組換え体を得た。これらの組換え体の制限酵素地図を作成するとともに、試験管内パッケ-ジの効率の高いものを選択した。各組換え体のパッケ-ジの効球には1万倍の相違があった。パッケ-ジ効率の高い組換えファ-ジDNAを約2000個のマウス授精卵に導入し、supFをトランスジ-ンとして保有するマウスをサザン法により選択して、およそ200のマウス系統を得た。 これらのマウスから得たDNAを、試験管内パッケ-ジすることにより、マウス細胞中で生じた外来遺伝子supFの変化を、大腸菌指示菌を用いて検出/定量したところ、この検出系における自然突然変異率は約0.05x10ー5と推定された。得られたsupF突然変異の塩基配列を解析した結果、変異のほとんど全てが1塩基置換により生じていることが示された。以上のように、この検出系の有効性が確認されたが、試験管内パッケ-ジングの効率が、理論的に予想される値よりも低く、また、調べたほとんど全てのマウスで外来のラムダファ-ジが系代により変化/消失することがわかり、ここで用いたvectorとマ-カ-遺伝子さらにマウス系統の組み合せが不適当である可能性が示唆された。
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