本年度は、新潮域および津軽暖流域と四国沖の海底コア5本に含まれる有孔虫化石殻の酸素同位体比の測定を行った。その結果、 1.親潮は、過去2万年の間、現在と同様に釧路沖を流れていた。 2.少なくとも1.5万年前から1.1万年前の間、親潮は津軽海峡から日本海へ流入していた。 3.約1万年前に、日本海に対馬暖流が流入し、津軽暖流として流出していた。 4.四国沖は、最終氷期の最寒期(3.5万年前から1.5万年前)において、冬期の表層水温が現在の房総半島沖と同程度まで低下していた。 5.当時の四国沖の海底(水深2700m)には、親潮潜流の影響が強く及んでいた。 一方、浅海性堆積層中の貝化石群集の解析は、主として日本海側の完新世堆積物について行われた。その結果、 1.現在は台湾以南にしか分布していない亜熱帯種の貝群集が5000〜4000年前には能登半島まで生息していた。 2.現在、有明海以南に生息している貝群集が7000〜6000年前に男鹿半島まで北上していた。 3.現在、積丹半島以南に分布している温暖な貝群集が6000〜4000年前に、北海道のオホ-ツク沿岸まで分布していた。 4.これらの貝化石群集の移動から、縄文海進時(約6000年前)の日本列島沿岸の夏と冬の表面水温の変化が求められた。 上述のように、外洋域と沿岸域の研究成果をまとめることにより、北西太平洋域の最終氷期以降の海洋古環境変遷をより詳細に復元することができる。
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