今年度も個々の人間を最小の構成要素とする人口学的マイクロシミュレ-ションを実行した。具体的には、個々の人間が集まって形成される集落として正六角形のセルを想定し、それぞれの集落の人口支持力と人口増加速度を決めるパラメ-タとしてNRR(Net Reproduction Rate)を設定する。そして人口支持力とNRRを変化させることにより、集落の消滅ないし人口増加による他集落への移動の様子を経時的に観察した。 これらの作業のなかで、演算速度が遅いことが問題となったため、今年度は主として昨年度までに作り上げたシミュレ-ションプログラムを改良する作業を行った。その結果、取扱い可能な集落数、総人口数、シミュレ-ト期間などの制約は実質上なくなり、演算時間も大幅に短縮することが可能になった。新たなプログラムにおいては演算時間は総人口にほぼ比例し、たとえば総人口6万人のとき1年分の演算時間は約1秒である。したがって、パ-ソナルコンピュ-タ自身の演算速度による制約は依然として残ることになる。 現在このモデルを用いて、オセアニアのサル-フ大陸におけるモンゴロイドの拡散についてのシミュレ-ションを試みている。サル-フ大陸の地形図にセルをあてはめ、各セルに5つの水準の人口支持力を設定し、出産、死亡と人口支持力のパラメ-タを変化させることによりこの地域におけるモンゴロイドの拡散をシミュレ-トする。そしてこの地域における既存の知見と比較・検討する。
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