北海道、北上地方、八ケ岳周辺の中部内陸高地にかけて、周氷河地形、周氷河現象の発達に関わる最終氷期の寒冷な自然環境を復元するために、野外調査および従来の研究成果の整理、再検討を行った。その際、周氷河現象発達の重要な条件の一つである構成物質を同質軸にも利用できる示標テフラをふくむ火山灰層中の現象を対象とした。 主な研究結果: 1)根釧原野のice wedge状構造は分布、発達ともに広くなく、ほぼ最終氷期の扇状地砂礫層中に限ってみられる。それらのうち何ケ所かでは、wedgeの側壁がきわめて直線的かつシャ-プで、深さ3ー4mに達し、北海道のほかの地域にはない特徴と規模を持つ。 2)北上地方では、海抜100m前後の低所でも火山灰層の著しい撹乱が観察される。撹乱現象はアイスランドで広く発達するソリフラクションロウブの断面形と同じである。北上低地が最終氷期に森林限界以下になったか、ロ-カルな現象であったかは重要な検討課題である。 3)八ケ岳周辺では、北海道や北上地方で見られるような火山灰層の撹乱現象はほとんど見られない。したがって、火山灰層中の化石周氷河現象に基づく限り、中部地方高地の最終氷期の周氷河環境を北海道の低地や北上地方と同様に見ることはできない。不連続一点在的永久凍土下限高度は、1000ー500mに引かれている。永久凍土が発達していても、森林の下では凍結撹乱現象が発現しなかったのか、あるいは永久凍土はなかったと考えるか、さらに検討が必要である。
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