研究概要 |
高温超伝体を用いて77K以上の温度で動作する量子デバイスの作成を目標にして,以下の様に研究を行った。 1.異方性を制御した薄膜の成長 高温超伝導体は結晶異方性が顕著で,その電気的特性についてもC軸方向とそれに垂直なab面内では著しく異なる。典型的なデバイスであるジョセフソン接合を作製する場合,結合の強さはab面内の方が大きいと予想されるため,a又はb軸が基板に垂直な配向の薄膜を得る必要がある。このために,温度,バッファ層などを検討した結果,基板温度で550℃〜600℃,バッファ層として,PrをYと置換したPrBa_2Cu_3O_Xが最適であることを明らかにした。 2.ジョセフソン接合の作製 a,b軸配向膜とC軸配向膜を用いて,Y系高温超伝導体ー銀ーNbの二層積層型の接合を作製し,その電流電圧特性から種々の超伝導パラメ-タを評価した。この超伝導ー常伝導ー超伝導接合(SNS)のうち,ジョセフソン電流が流れた素子のIcーRn積は結晶の配向によって異なり,C軸配向のもので数μV,a,b軸配向のものでその数倍であり,理論値より1桁以上低い値となっている。 一方,Agの代りに同族のPrBa_2Cu_3O_Xを用いた接合ではこの中間層の厚さが500Aの時にジョセフソン電流が観測された。(a軸配向)またIcRn積はAgの場合より大きく,絶縁性のPrBa_2Cu_3O_x性質が明らかに反映されていることも判った。いずれにしても接合界面の様子が詳細に検討されなければならないと同時に,薄膜の結晶の完全性も接合の特性を左右するため,より精密なプロセス制御が必要である。
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