研究概要 |
結晶の対称性の変化が超伝導に影響を与える典型例として、La_<2-x>Ba_xCuO_4系のx=0.12付近の狭い領域でバルクの超伝導が急激に消失する問題がある。この組成領域では60KでCuO_6面体の回転に伴う構造相転移が生ずると共に、電子系の変化を示唆する電気抵抗、ホ-ル係数等の急激な変化が観例される。本研究では、ミクロな実験手段である核磁気共鳴法(NMR,NQR)、及びミュ-オンスピン回転(μSR)を用いて、酸化物高温超伝導物質La_<2-x>(BS,Sr)_xCuO_4系でのCu,La_-スペクトルの共鳴周波数、核磁気暖和時問等を測定することにより、この系での局所的構造の変化と磁性の相関を調べた。 La_<2-x>Ba_xCuO_4のBa濃度x=0.12付近で、高圧酸素炉の使用をふくめ様々なガス雰囲気中でできるだけ均一な試料を作製し試料依存性も調べた。Cuの零磁場核磁気共鳴(NMR)を観測し、そのスペクトルが20‐80MHzまで広く分布することを見いだした。さらにμSR測定ではスピン偏極のおよそ35K付近から減少しており、この2つの実験結果はCuサイトに明らかに内部磁場が存在することを示している。磁気転移温度はおよそ35Kであり、低温への構造相転移温度(60K)より低い温度である。磁気秩序状態は低温正方晶のみで観測され、構造相転移との移い相関がみられた。 この様に本研究では、低温正方晶への構造相転移による電子係の局在化が、低温でCuスピンの磁気秩序状態をもたらし、超伝導を抑制することを明らかにした。
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