銅系配化物は千種類以上の多くの元素で構成されている複雑な化合物であるため、その発見以来良質の試料合成が困難であり多くの努力が払われてきているにもかかわらず依然として不満足な状態にある。これらの新しい超伝導体を材料化するために、構成元素の組成、ミクロ構造、組織等をより精密のに化学的制御する方策の確立が強く望まれている。この前提となるのは的確な試料のキャラクタリゼ-ションである。本研究ではNMRという超微視的な物性研究手段を用いて、酸化物超伝導体のキャラクタリゼ-ションの新しい手法を確立することを目指した。具体的には物性研究用の現在の装置を改良し、且つデ-タ解析の手法を開発することであった。このような共鳴技術を酸化物超伝導体に適用して、酸素を含む構成元素すべての位置での局所的な電気的性質、磁気的性質を明らかにしたことのみならず、材料全体の均一度、相分離の様子、構造相転移等が共鳴の位置や形の変化として把握できることが示された。核磁気共鳴の測定装置としてはパルス法を採用し、特に核四重極共鳴法(NQR)を用いた共鳴スペクトルの効率の良いデ-タ取得法の確立、スペクトル解析のプログラムの開発を行った。これらの技術を具体的にはLaSr系やTl(2201)系に適応し、特に銅のNQRのスペクトル解析より銅サイトには電場勾配の異なる二つのサイトが存在することを初めて明らかにし、超電導を担っているCuO面のCuの電子状態は均一ではなく、ホ-ルのド-プに伴って大きく二種類のサイトに区別されることを主張した。この原因は試料の不均一性によるものか、相分離によるものか、あるいは系の本質的な事柄なのかの判定は今後の研究に待たねばならないが、NQRによるスペクトルが銅の局所的な環境を強く反映していることは明らかで、他の方法では全く得ることのできない。キャラクタリゼ-ションの手法が確立されたと言える。
|