研究概要 |
本研究は、本重点領域研究の中の平成2年度公募研究として認められたものの第二年目である。従って、研究実績としては昨年の報告書に引き続いているので、研究実績5)から始める。 研究実績5)本年度は、平成2年度の研究を更に発展させるべく、実験可能温度域を液体ヘリウム温度まで拡張した。この拡張によって、合成した試料のTcは、完全な熱平衡の下に1.2Kまで測定可能となった。1991年8月の富士教育研修所における合宿では、「CuS,X‐S系の超伝導の探索」として、CuSおよび、CuSにNiS,ZnS,LaSなどでそれぞれ約4%置換、または、混合した試料のTcの変化を報告した。また、市販のCuS(和光純薬)の購入のままのもの、または、それを250℃で5時間程度熱処理したものでは、Tcが観測できないが、さらに長時間熱処理したものではTcが観測された。この理由が不明であったので、我々自身精製した硫黄粉とCu線から、色々な条件の下にCuS試料を合成した。それらの試料について、Tcを測定し、X線回折をとり、比較検討したところ、X線回折パタ-ンにおいて、たとえば、(008)面からの線は、Tcの低い試料や、超伝導にならない試料では全く見えないのに反し、Tcの高い試料ではかなり強い。このような変化は(006)面からの線についても言うことができる。一方、(110)面からの線や、(103)面からの線はTcの変化には敏感ではない。従って、(006)面や、(008)面のでき方がTcを決める一つの要因となっていると考えられる。(006)面、(008)面、は共にc軸に垂直な面であって、これらの二次元面内での結合性がTcを左右するということになるが、そういう点は、酸化物超伝導体におけるCu‐O結合のつくる二次元面が超伝導性の本質と関連することと似ている。従って、硫化物高温超伝導体を作るには、CuSのこの二次元面を空間的に遠ざける工夫をすればよいわけである。
|